缶コーヒーを買おうと思ったら「鬼滅の刃」。
スーパーマーケットへ行っても鬼滅の刃。
最近、どこへ行っても鬼滅の刃。
映画はもはや向かうところ敵なしの大ヒットを記録しているという。
2年前、息子からこの漫画の話を聞いたときは
「ふーん」という感じで流していた。
「ONE PIECE」より人気があるのはすごいなと思ったが、
まさかここまで売れるとは予想だにしなかった。
唯一、最初に聞いた時に感心したのは、
時代設定だった。
大正時代をもってきて、そこから世界観を構築するセンスは、
素晴らしいなと思った。
江戸時代じゃ鬼が物語に出てくるのは当たり前。
昭和の初めの方でもいいかなという気はするが、
ちょっと戦争の影が濃すぎる嫌いがある。
戦後の世界では無理がある。
明治の後半から大正は面白い。
とりわけ大正はデモクラシーの時代で、
大衆が自由な生き方があることに気づき、
それを模索し始めた時代だ。
そして何よりも科学と合理主義の現代世界と
伝統的な古い世界とがせめぎ合っていた。
鬼なんて非科学的で非合理で、神秘的な存在は
公的機関は認めない。
社会にそんなものはあり得ない。
だからこの世のいないはずの鬼を退治しようなんて
鬼滅隊は闇の存在である。
そして、そこにこそドラマがあるのだ。
光の中では安全に、安心して暮らせるけど、
そこにドラマは起こらない。
「鬼滅の刃」から100年後の現代世界に生きていて思うのは、
人は神秘なき世界では生きられないということ。
どんなに光に満ち溢れた、
科学と合理性と客観性が支配する世界になっても、
人は神秘的なものを求め、暗闇の奥を覗きたがるだろう。
人間らしく、感情を動かし、呼吸をするために。
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