3ヵ月ぶりのリアル取材。
「寺力本願」の取材で千葉県市原市姉崎へ。
人生未踏の地。
姉崎とは色っぽくい女と壮大な海原のイメージを抱かせる地名だ。
もろ肌脱いだ姉さんが岬の先端に立ち、
潮風に長い髪をなまびかせ、漁師の男たちに水平線を指し示す。
その指先には房総の海を行く巨大なクジラが潮を吹き・・・。
てな幻視を抱きつつ、内房線・姉ヶ崎の駅
(地名は姉崎だが駅名は姉ヶ崎)に降りたが、
もちろんそんなイメージを想起させる風景などカケラもない。
かつては確かにここには豊かな房総の海が広がっていた。
漁も盛んで、海苔の養殖、海水浴、潮干狩りなども行われていた。
時には沖合にクジラだって回遊していたかもしれない。
しかしその海は60年ほど前に消え去った。
高度経済成長時代の『所得倍増計画』を受けて
昭和35年度から『五井、姉崎、袖ヶ浦地区土地造成事業』が
スタート。
『京葉工業地帯造成計画』にもとづいて
石油精製・石油化学の諸企業がこの五井姉崎地区に誘致され、
姉崎の海は完全に埋め立てられた。
そして漁業に携わっていた人々の多くは漁業権を放棄した。
いまにして思えば、わずかなお金のために
かえがえのない、魂に等しいものを売り払ってしまった・・・
と言うと、感傷的に過ぎるだろうか。
農地・山林もそうした企業の社宅建設のため宅地や道路となり、
団地があちこちに建設されて、姉崎地区は大きく変貌。
「姉さんの岬」の伝統、暮らしは、はるかな過去のものになった。
ただ、現代の僕たちからは「破壊」に見える
海の埋めたてや、山の切り崩しは、
当時の人たちにとっては新しい時代の訪れを告げる風景、
希望に胸高まる光景だったのだろう。
一概に批判はできない。
今やその工業地帯化・埋め立ての物語も過去のものとなり、
かつてここが海だったことを想像するのさえ不可能だ。
生活の場としての海、遊び場としての海。
これらの記憶は一部のお年寄りの記憶の中には
まだ残っているようだ。
今も盆踊りシーズンに歌われている
「姉﨑音頭」は昭和初期に作られたという。
その歌詞には当時の情景が描かれている。
「ハァ/磯の千鳥のヨ/鳴く音にあけてネヨイトネ/白帆うれしやうれしや姉ヶ崎/サァサヨイトコ姉ヶ崎」
遠浅の海には、米やまきを東京方面へ運ぶ
五大力船などの帆船が浮かび、
西には富士山、北には筑波山が望める
素晴らしい景色だったという。
バス停「別荘下」も、ここが東京からやってくるお金持ちの
別荘地でもあったことを忍ばせる。
「時折、船の霧笛が聞こえるんですよ」
取材先のお寺の住職はそう語った。
駅からは臨機工業地帯のコンビナートの煙突が見えた。
たしかに海は近い。
けれども僕には記憶の中にあるという
遠い遠い幻の姉崎の海のほうが心に焼き付いた。
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