まむしの銀次、横須賀に死す

 

むかし一緒に芝居をやった友だちが亡くなった。
横須賀までお葬式に行ってきた。

 

京急・横浜中央駅では、
電車が到着するたびに
山口百恵の「横須賀ストーリー」が鳴り響く。


そして駅前通りのベンチには
演奏に疲れたジャズミュージシャンが休んでいる。

 

僕が書いて彼が出たのは、
黄泉の国から生き返った子どもが
自分の母親を求めて旅をする。
その母親の血を吸えばこの世に生まれ変るのだが・・・
というダークファンタジー系の芝居だった。

 

「まむしの銀次」という芸名だった。
やくざっぽい名前でがんばっていたが、
ずいぶんとやさしい男だった。

 

彼の役はストリッパーのヒモだった、ような記憶がある。
ずいぶん昔のことで、その台本も頭の中にしか残ってないので、
細かいところは忘れてしまった。

 

現実の世界でそのストリッパー(役)の彼女と結婚した。
おもろい夫婦だったのに、
なんでだか不幸なことがあった。

 

棺の中に愛用の藍色の作務衣と
麦わら帽子を入れたら、
元気だったころの姿がよみがえった。

最後は出棺を手伝い、霊柩車を見送った。

 

58歳。僕より若い。
みんな、ウサギのようにピョンピョン跳ねて
人生のゴールにたどり着いてしまう。
僕はカメのようにノロノロしている上に、
ときどき昼寝しているので、
まだまだゴールは遠そうだ。
またそのうち、ウサギの葬式に付き合うのかも知れない。