★14歳の脳の地図
子どもの脳からおとなの脳への移行が完了する。
それが14歳。
だから人は人生を14歳の感性で生き続ける、という話があります。
僕は1960(昭和35)年の生まれなので、
10代がそのまま1970年代です。
14歳だったのは、1974(昭和49)年で、
この頃はロックばかり聴き、音楽雑誌を読み耽っていました。
だから脳がそのころ見聞きしたもので構築されている。
今日もレッド・ツェッペリンのライブを
聴きながら仕事しています。
最近はYouTubeでいろいろな音源が出ていて楽しめます。
1960~70年代のカルチャーをリアル体験していることは、
下の世代から見ると、すいぶんうらやましいことらしく。
平成生まれ・サブカル好きの息子などは
時々「親父はいいなぁ」と呟きつつ、
かの時代の小説や映画やマンガに現をぬかしたりしています。
★不滅の昭和イメージ
べつにノスタルジーな話をしよう、
個人的な思い出を語ろうというのではありません。
元号が平成から令和に代わって間もなく1年。
その前の昭和の時代、昭和の感性は
人々の心から遠ざかっていくのだろうと思っていましたが、
どうもそんな気配が感じられません。
それどころか、これからますます昭和の価値、
60's~70'sの価値が見直されるのではないかという気がします。
ブームが去り、それは文化になる。
他国についてはよくわかりませんが、
少なくとも日本において、
いわゆる昭和レトロに対する追憶と憧憬は、
一つの歴史を作ってしまいました。
大きなエポックは2008年に公開された
映画「ALWAYS 三丁目の夕日」――
この映画自体が、西岸良平のノスタルジーを追う漫画が原作――
でした。
しかし僕の印象ではその前の、
20世紀末ごろからすでにブームは始まっていました。
おそらく1995(平成7)年の
阪神淡路大震災とオウム真理教の地下鉄サリン事件、
そしてその後立て続けに起こった
神戸児童連続殺傷事件など一連の少年犯罪。
こうした社会を震撼させた事件の数々が、
人々の脳の奥に染み付き。
大きく影響しているのだと思います。
あのころから日本の社会全体が
不気味な色をした海を漂流しだした気がします。
★いいところをかき集めて
そこで多くの人たちの心のよりどころになったのが、
「イメージの中の昭和」でした。
「イメージの中の昭和」は、実際の昭和とは異なり、
戦前の20年間や最後の10年間ぐらいは範疇に入りません。
戦後の復興期からバブルが始まるまでの30年間――
だんだん豊かになってきたけど、まだそこかしこに
貧しさが残っていた時代を指します。
今から比べると、物質的・経済的な面でも、
社会制度的な面でも各段に貧しかった。
貧乏人はまだ多く、情報は少なく、人権意識は乏しく、
男尊女卑は激しく、障がい者はあからさまに差別され、
日常的に暴力や危険がはびこり、
古いしきたりで個人個人は可能性を縛られていた。
健康に関する面もひどく、新型コロナウィルスよりも
よほど恐ろしいコレラや赤痢などの感染症が数々あり、
公衆衛生もなっていなかった。
僕も子どものころに使っていた自宅のトイレ、学校のトイレ
(トイレと言うより便所と呼んだほうがふさわしい)、
駅や公園の便所などは、二度と使いたいと思いません。
社会は確実に良くなった。
少なくとも昭和に比べれば、安心で、安全で、便利で、快適に、
楽しく暮らせる社会になった・・・はずだった。
それなのに、どうして人々は昭和を愛おしむのか?
それもリアルタイムで体験している僕たちだけでなく、
映画やマンガや小説や音楽でしか知らない
平成の子どもたちまで。
もちろん、それはいいところのイメージのかけらを
かき集めているだけなんだけど。
★劇的な世界の変貌と僕たちの不安
新型コロナウィルスの蔓延によって、
世界は大きく変貌しようとしています。
少し以前からAI化・ロボット化社会への移行が
話題になっていましたが、
僕を含め、多くの人は
10年、20年かけて徐々に進むのだろうと
何となくイメージしていました。
そうでなければついていけない人々が大勢出るからです。
ところが、今回の新型コロナウィルスの世界的大流行。
これが大きなきっかけになって、
AI化・ロボット化は劇的に進捗する予感がします。
そうでなければ今後の経済活動がおぼつかないからです。
オフィスの仕事は在宅勤務、いわゆるテレワークが主体になる。
リアル店舗はAIの導入によって、
無人化・キャッシュレス化が進む。
飲食店の現場のサービスはロボットが主役になるかもしれない。
飲食や日用品以外――
ネットでは注文できない品物のリアル店舗は激減するでしょう。
ヨーロッパの社会から
キスやハグの習慣が消え去るとは思えないけど、
リアル空間におけるスキンシップ、
Face to Faceのコミュニケーションは、
かなりの割合でバーチャル空間におけるそれに
差し換えられるでしょう。
5年後、今ある街の風景は大きく変わっている可能性があります。
社会はますます安心で安全で便利で快適になるに違いありません。
けれどもそれと引き換えのように、
“かけがえのない何か大事なもの” が圧倒的に不足してゆく。
その不足のために、僕たちの中には日々、
小さな小さな、それこそウィルスのような微細な不安や恐怖、
ストレスが入り込んでくる。
拭っても拭っても、塵のような不安と恐怖とストレスが
毎日どんどん降り積もってくる。
それによって心を病む人、生きる自信を失う人も
ますます増えるかもしれません。
★昭和文化によるライフスタイルの補完
圧倒的に不足してゆく何か大事なもの、
僕たちのたましいを蝕むものの正体はいったい何なのか?
今のところ、僕にはよくわかりません。
ひとつ分かるのは、
イメージの中の昭和が、
そして、60's~70'sに生まれたカルチャーの数々が
圧倒的に不足してゆく何かを補ってくれるのではないか、
不安や恐怖やストレスを和らげたり、
治癒したりしてくれるのではないかということです。
AI化・ロボット化社会へ移行していく今後は、
昭和のあの時代に生まれ、育ったものが
人間の未来全体にどんな意味があるのか?
分析し、再発見し、解釈し、リメイクし、
新しいライフスタイルの中でどう生かしていくのか
考える時代になるなのでしょう。
昭和も、60's~70'sも一つの歴史になり、文化になった。
未来のために、あの時代、あの場所を心の地図として、
何度も見直すことになるのかも知れません。
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