村上春樹の「1973年のピンボール」の中に
「ねえ、10年って永遠みたいだと思わない?」
というセリフがあった。
けっこうしびれたフレーズだ。
新しい生活を始めた4畳半の部屋で寝ころびながら
自分も永遠みたいな時間のなかを泳ぎながら
ページをめくっていた。
そうだ、子どもの頃、10年は永遠に等しかった。
10代もまた。
20代もたぶん。
10年が永遠でなくなったのはいつからだろう?
咲いてしまったら散らなくてはならない運命。
生きてる限り、無理なこととわかっていても、
桜の花にいつまでもつぼみのままでいてほしいと呟く。
つぼみのままなら永遠に希望を抱き続けられる。
だけど、永遠のつぼみには
きっとひどくがっかりして、
どうして咲かないのかと腹を立ててしまうだろう。
また咲くよ、くりかえし10年でも、50年でも、100年でも。
そう言って笑って散っていく桜に
ぼくはなりたい。
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