最近、クリスマスなのに奇跡が起きなくなった。
昔、シナリオ教室に通っていた頃、
習作で1時間もののドラマのプロット(あらすじ)を書いて
提出するのだが、
「秋口になると、やたらクリスマスの話が増えるんだよね。
それもほとんどミラクルやマジックやらが起こる話なんだ」
と、講師のライターが呟いていたのを覚えている。
人のことは言えない。
僕もそういう話――
たしか「傷天」のショーケンみたいなチンピラが
奇跡のような幸運に遭遇するのだが、
愛すべきバカさ加減でチャンスを取り逃がす――
といった話だった。
もちろん、本当に昔はクリスマスに
奇跡が起きていたわけではない。
ただ「起きるかもしれない」
「起きたらいいな」「起きそうだ」
「いや、絶対起きる。起こしてみせる!」
といった気概が人々の心の中にあった。
早い話、ネッシーはいるとか、UFOがやってくるとか、
ノストラダムスの予言は当たるとか、
そういうのと同じ類の、
アナログな世界ならではの、発熱系の幻想である。
デジタルな世界になり、
何でも数値化されるようになるにつれ、
熱を帯びた幻想は冷え切り、
クリスマスの奇跡は人々の心の中から消滅していった。
今、シナリオ教室に行っても、
クリスマスの奇跡なんて話を書くやつは
ほとんどいないだろう。
けど、もうしばらくしたらまた復活しそうな気がする。
「やっぱりクリスマスなんだから、
奇跡ぐらい起こってもらわなきゃ困る」
と、みんなが言い出して、
あちこちでどんどん奇跡が起きるようになるだろう。
そんな日がきっと来ると僕は思う。
というわけで、
今晩は夢の中で素敵なプレゼントを戴くことにします。
メリークリスマス。きよし夜を。
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