全国曹洞宗青年会が映画を製作した。
今年のカンヌ映画祭・特別招待部門に出品された作品だ。
タイトルの「典座(てんぞ)」とは、
禅宗の寺院で僧侶や参拝者の食事を司る役職。
平たく言うと「調理師」「料理番」だ。
曹洞宗では日常におけるすべての行いが修行の一環であり、
修行堂において、典座職は特に重んじられている。
そしって典座の教え(典座訓)は調理のみならず、
仏道を歩むうえで非常に大切な教えをたくさん含んでいるという。
主人公は修行時代、その典座職を経験した二人。
3・11で寺も檀家も家族も失い、
今は瓦礫撤去の土木作業に携わる僧侶と、
その弟弟子で、
ひどい食物アレルギーの息子を抱えて暮らす僧侶。
とても人間臭い若僧らが日々の生活に苦闘しながら、
一般人からの電話での「人生相談」に応じる姿には、
とても美しいものを見た気がした。
宗教臭い、小難しい映画ではない。
映像はあくまで美しく、今を生きる人間の呼吸を感じられる。
もちろん、いわゆるエンターテインメントではないが、
「おいしい精進料理映画」といった趣だ。
同青年会が映画製作を思い立った理由として、
3・11以降、自分たちが「求められる」と感じており、
世に活動を見せたい、奮闘する姿を知らせたいという思い、
また、自分たちを鼓舞したいという思いががあるようだ。
彼らの思いとは違って、
僕には世界の宗教離れはますます進んでいると感じている。
江戸の昔、地域のお寺には人生のすべてが詰まっていたが、
今は子育ても、教育も、医療も、人生相談も、冠婚葬祭も、
すべてが産業化されてしまった。
その中で僧侶は、、お寺は、いかにして生きていくのか?
社会のために働けるのか?
大きな課題となっている。
実は月刊仏事の連載企画「寺力本願(じりきほんがん)」で
この映画の主人公を演じた、
山梨のお寺の僧侶を取材することになっている。
この映画を体験した意義、
日本の、世界の観客の反応について訊いてみたい。
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