「人生の幕を下ろした時に頂けるよう励みます」
そう言ってイチローは国民栄誉賞の授与を辞退した。
カッコいい!と思うと同時に、もし受けちゃったら、ちょっとカッコ悪いよな、とも思った。
たぶん国民の半分は僕と同じように感じるんじゃないか。
べつに権威に対する反骨心とか、
自民党の宣伝材料に使うなとか、
そんな思想めいたことを言っているのではない。
単に、もらっちゃったら、イチローらしくない。
「長い間のヒーロー業、ご苦労様。国民みんなでお祝いします」と、
定年退職のおじさんに花束が贈られるような雰囲気になってしまう。
そんなことがあると、一気にリタイアしたじいさんになってしまいそうだ。
もうそんな時代じゃない。
定年退職して過去の栄光だけでやっていける時代じゃない
イチローには、孤高の姿勢を保ってほしい。
国民栄誉賞なんて、時代遅れな荷物を担がなくていい。
何するにしても、軽やかに新しい人生に踏み出してほしい。
たぶん本人もそう思っていると思います。
さて、ここからは日本昔話。
数多の伝説を作り出してきたイチローだが、
そのストーリーの根本にあるのは、彼がプロ野球に入るとき、
けっしてそんなに注目される選手ではなかった、ということがある。
1991年のドラフトでのオリックスの指名は第4位。
彼は愛知県の出身で、子供の頃から
地元・中日ドラゴンズのファンだった。
なので、中日が早い順番に指名すると思っていたのに、
オリックスが先を越してしまったのだ。
これは意外なことだった。
その後の大活躍を目の当たりにした名古屋のファンから
「なんでイチローを取らなかった!」と球団に講義が殺到。
「次の順番で指名するつもりだったんだよ~」と、当時の高木守道監督が言い訳がましいことを言ったため、火に油を注いだことをよく憶えている。
メジャーリーガーとして活躍するようになった後、一時期、名古屋のファンの間では、
「イチローは大リーグを辞めたら、日本のプロ野球界に戻ってきて、中日でプレーする」
という噂が広がったが、それも幻と消えた。
僕もその名古屋のファンのひとりだったが、
落合監督が辞めた頃からなぜか野球自体に興味をなくして、
この10年余りの間、全然、見なくなってしまった。
いま、プロ野球ではどんな選手が活躍しているのか、ほとんど知らない。
だけど、もし、イチローが日本で、中日の監督なりコーチをやるというなら、また観るようになるかも知れない。
ま、ありえないと思うけど。
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