ショーケンが死んだ。
代表作はやっぱり、「傷だらけの天使」か
「太陽にほえろ!」のマカロニ刑事。
どちらも僕らのヒーローだった。
マカロニは主人公だったのにも関わらず。
タチションしている最中に、チンピラに刺されて死んだ。
ショーケン本人が考えたエンディングだ。
子どもの頃に見て「人生は不条理なり」と教えられた。
ショーケンにはそんな気はさらさらなくて、
ただ、こうやってぶざまに死んだら
カッコいいぜ、と思ったんだろうけど。
「傷だらけの天使」のオサムは、探偵をやってたけど、
みじめで卑怯で不器用でカネがなくて、でも純粋な、
でもやっぱり虫ケラみたいな男だった。
だけど、とびきっきりイカしてた。
とくに男はみんな、あの生き方に憧れた。
とんでもなくぶざまでカッコ悪いのに、なぜかそれがカッコいい。
1970代のティーンエイジャーの男で、
「傷天」にまったく影響を受けなかったやつは
いないのではないかと思えるぐらいだ。
あれほど、カッコ悪いカッコよさを
体現できる男は、もう二度と出てこない。
うちの本棚に「傷だらけの天使」の脚本集がある。
メインライターだった、名脚本家の故・市川森一氏のペンによる
8本の脚本が収められている。
この本が出た1983(昭和58)年の時点で、
傷天は、すでに伝説的なドラマとなっていた。
あとがきで市川氏は語っている。
「傷だらけの天使」は、テレビ界のどんな賞ももらわなかった。
視聴率も、最後まで20%に届かなかった。
それにも関わらず、自作の中で、これ程、いつまでも、
人々の口の端にのぼる作品を、私はほかに持たない。
当時、業界では非常に評判の悪い作品だったので、
市川氏自身も「傷だらけの天使」って、なんだったのだろう?
と自問することが、よくあったという。
そして氏は、自ら書いた第1回のファーストシーンの
1行目のト書きに、その答を見つけたと言う。
――鳩が糞(クソ)を垂れて飛び立つ。
鳩=平和のシンボル。すなわち、平和の糞。
70年代の繁栄が垂れ流した糞。
「傷だらけの天使」とは、ほかでもない、
実に、鳩の糞だったのだ。
それもまた遠い昔話となった。
時も時。平成の終わり。
われらがヒーロー・ショーケンには、平成という時代は似合わなかった。
合掌。
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