食っていくためには「わらじ」が何足も必要だ。
先週取材した六本木のお寺の住職の父は、仏教関係の新聞の記者と僧侶を兼業していたと言う。
朝のお勤めが終わったらスーツに着替えて会社に行き、帰宅すると僧服に着替えて夕方のお勤めをする。
子どもの頃からそんな父の姿を見ていた住職は、僧侶の兼業に何の違和感も持っていなかったと言う。
どうもこれは特殊な例でなく、住職さんの中には学校の先生や公務員など、他の仕事と兼任している人が大勢いるらしい。
観光名所になっているようなお寺でない限り、そうでないと生活していくのが難しい所が増えている。
言われてみればそうかもしれない。
そもそも宗教に従事する仕事を「ビジネス」と呼ぶのは間違っている。
一般人は僧侶を「聖職」と見なし、清貧であることを求めるだろう。
けれども、お坊さんも生活しなくてはならないし、家族を養わなくてはならないし、お寺を維持していく必要がある。
経済成長時代はどうだったのか知らないが、いずれにしても、お坊さんだけやっていれば生活に困らなかった時代は、もう「古き良き時代」になりつつある。
しかし、これは何もお坊さんに限った話ではない。
人生フルタイムで一つの仕事に集中するということが難しくなってきている。
いまや多くの人にとってダブルワーク、トリプルワークは当たり前。
そうでもしないと日本で「まともな生活」は保障されないのではないか。
いろんな物価が高く、何をするにもお金がかかる日本で、一つの仕事(一つの収入口)だけで食える状況というのは、もはや超お金に恵まれた、セレブな特権階級と言えるのかも知れない。
会社は社員のアルバイトも奨励する。
あるいはお父さんは仕事一つでも、夫婦共働きでお母さんも稼いでいたり、さらには子供も家の経済を助けるのに参加するなど、一世帯にいくつもの収入口を設けるのが普通になってきている。
こういう状況になると「自分マネージメント術」が重要になってくる。
どうひっくり返っても、1日は24時間だし、1年は365日しかない。
その限られた時間をどう配分して経済を安定させ、家族を安心させ、自分の夢をかなえ、アイデンティティを保てるか。
どうすれば一人何役もこなすことができ、しかもそれぞれのパフォーマンスの質を上げられるのか。
なおかつ、それでもストレスを溜めず、ゆったりとした気持ちで生きられるか。
これは現代を生きるすべての人にとって、考える必要のあるテーマだと思う。
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