ある日、男は自分が縮んでいることに気が付いた。
服がなんだかだぶついているように感じる。
これは何だろう? まさか老化現象では・・・。
いや、オレはまだそんな齢ではない。
妻はまだ若い。子どもだってまだ小学生だ。
男はこっそり医者に相談してみたが、有効な解決方法は見つからない。
それに縮んでいると言っても少しずつだから大きなダメージがあるわけではないし、とりあえず健康上の問題があるわけでもないから、いいじゃないですか気にしなくても――などと言われてしまった。
インターネット上では昔の友人らとやり取りしているが、思い切って自分が縮んでいることをカミングアウトしてみた。
みんな「そりゃ大変だ」とは言ってくれるが、やっぱり「命に別状ないならいいじゃん」とか言われてしまう。
それから怪しげなクスリや健康器具のセールス、謎のセミナーへのお誘い、カウンセリングの勧誘メールがひっきりなしに舞い込むようになった。
見捨てられたようで男は途方に暮れた。
このまま1年たち、2年たったら・・・と、男の想像はふくらむ。
そうこうしているうちに縮む速度が日に日に早まっていくような。
男は身長測定器を買い、毎日、データを取るようになる。
そして日記帳に克明な記録も取っていく。
縮んでいることに気づき出してから、1日1日がかけがえのないものになっていく。
そして男は息子の視線が気になりだした。
筋肉自慢のマッチョなその男は、息子を厳しく鍛えていたが、彼はなんでこんなに軟弱野郎なのだろうと思っていた。
その息子が自分より大きくなっていく――いや、自分が息子より小さくなっていく。
じわじわと男は不安と恐怖に追い詰められていく。
これはもしかしたら息子〈子ども〉の視点で、小さくなっていくお父さんを描いた方が面白くなるかも知れない。
コメントをお書きください