原宿のお米屋さんで、五つ星お米マイスターの小池理雄(こいけただお)さんが本を出した。
同じく五つ星お米マイスターで沖縄在住の渡久地奈々子(とぐちななこ)さんとの共著。
詳しい経緯は知らないが、お二人はSNSでやりとりしているうちに意気投合し、本を作ろうということになったらしい。
それぞれ日常的に情報発信しているので、文章を書くのもお手のものだ。
一言で言ってしまうと、これは現代のお米のバイブルである。
もったいぶって「現代の」と付けたけど、お米の種類から精米やブレンド技術、味の分析、お米の選び方・炊き方、農家さんの取り組み紹介、食育や稲作文化など、これほど広範囲にわたる関連情報をおにぎりみたいにギュギュっと一冊にまとめた本は以前はなかっただろうから、昔の時代も含めて日本初、と言っていいだろう。
さらにこれほどお米という食品にこだわり、味や食感や栄養価など理系的に、また、歴史・文化など文系的にも、これほど広く深く研究を進めている国は日本をおいて他にないだろうから、日本初=世界初、日本一=世界一のお米のバイブルと言って差し支えない。
実は僕はイベントや取材などで小池さんに何度かお世話になっているので、少しはヨイショが混じっているが、そんなものは米粒程度のもので、ヨイショ抜きでもこれがバイブルであることは疑いの余地がない。
これほど充実した内容ならカラー写真をふんだんに搭載してドドン!とデラックスな装丁の高価な本にしてもよかったのに・・・と思うのだが、それをあえてコンパクトな新書版にし、値段も抑えてより多くの人たちにお米情報を普及したいという思いがあったようだ。
そんなわけで台所でお料理しながらでも気軽に読めるようになっているので、ぜひとも手に取ってみてください。
唯一惜しいのは共著ゆえ、お二人の個性がやや相殺されているかなと感じたこと。
僕が知っている小池節は余り前に出ていない。
しかし初めての本だし、まぁ、これはしかたない。
それぞれ原宿・沖縄とユニークなホームグランドを持っているので、そうした地域性を活かした活動にも期待したい。
ちなみに第7章で書かれている「原宿・表参道に田んぼが復活すると」という文章を読むと、何の違和感もなくあのあたりに夏の青田、秋の金色の実りの風景が浮んでくる。
やはりかつては田園地帯だった(今でも商店街などに「隠田」という地名が残っている)ので、原宿という土地はそうした素質というか、雰囲気を持っているのだ。
現代的なファッション、カルチャー、飲食店の立ち並ぶ表通りを一歩入ればそこに昔ながらの田んぼが広がっている――ぜんぜん自然ですよ、小池さん。
かえって面白くて素敵で、ますます原宿人気が上がるんじゃにかなぁ。
――といった楽しい想像もできる本が出て、これをきっかけにお二人ともますますメディア露出が増えそうだ。
お米文化の伝道師として今後もおおいに活躍しそうだね。
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