是枝裕和監督の「万引き家族」。
「犯罪でしか繋がれなかった」というキャッチコピーは、深淵な社会派ドラマのようなイメージを抱かせられるが、とても楽に観られる、ユーモアと現代的な寓意にあふれた映画だ。
子どもを誘拐したり、万引きさせたり、死んだ年寄りの死体を遺棄したり・・・といった話を聞くと、世の中にはろくでもないやつらがいるもんだと僕たちは思い、憤りを感じたり、子供が本当の親のもとに帰れるように願ったりもする。
けれどもそうした報道は事実ではあるけど、真実だとは限らない。
もちろん犯罪は悪だけど、その事実の裏にある人間の真実に光が当たることは、現実的にはほとんどない。
どうして彼らはそんなことを犯してしまったのか。
どうしてそんな生き方を選んでしまったのか。
誰も顧みることのない、闇の中に封じ込められてしまったものに思いを巡らせ、想像力を広げ、こんな事情があったのではないかと物語にすることは、映画や小説などの重要な役割の一つだと思う。
「万引き家族」はそうした映画ならではの役割に思い切りフォーカスした素晴らしい作品だ。
父親役のリリー・フランキーは是枝監督から「最後まで成長しないでくのぼうのお父さんでいてください」と言われたそうだ。
後半、疑似家族が壊滅し、それぞれの秘密が解き明かされるさま、そしてラストシーン、そのでくのぼうのお父さんがバスを追って走っていく姿と、二人の子供の表情には胸がえぐられる。
カンヌのパルムドール受賞でどれくらい興業成績があったのかは知らないけど、小さな映画館は平日昼間でも満席で、諦めて帰る人も。
是枝作品はもっともっと世の中に認知されて欲しいと思う。
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