なんで肉じゃがはお母さん食堂のメニューにないのか?についての探索と考察:あやうしおふくろの味編

 

 ファミマのサイトには「お母さん食堂」におふくろの味の定番・肉じゃがが載ってない。

 動揺した僕は別に肉じゃがのファンでもなく、急に食べたくなったわけでもないのに、どうしても気になって近所のファミマの実店舗に行ってみた。

 

 入口には母ちゃん姿の香取信吾。

 しんごママが流行っていたのはもうずいぶん昔の話。SMAPの絶頂期だったが、彼の残した実績は生き続け、今回見事こうした形で復活した。割烹着がまたよく似合っててすごくいい。

 

 中に入るとキャンペーン中だけあって売り場も目立つ。ファミマの力の入れようが伝わってくる。

 

 しかし、その棚を上から順番に見て行って、チーズインハンバーグやらビーフカレーやらサバの味噌煮やらボルシチやら筑前煮やら里芋の煮物やらポテトサラダやらきんぴらごぼうやら・・・実にいろいろ揃っているのにない。

 肉じゃがはやっぱりない。

 

 諦めきれずに向かいの棚でパンの品出しをしていた店員のおねーさん、というか香取信吾より齢いってるお母さん風情の女性に尋ねてみる。

 

 「あの~、お母さん食堂に肉じゃがないんですか?」

 「肉じゃが?どれどれ・・・ああほんとだ、いま品切れしてるみたいですね」

 「え? ということはたまたま現在売り切れてるだけで普段はあるってこと?」

 「ええ、すみません。夕方また品物が来ますから」

 「ちょっと待って。それ本当?サイトには載ってなかったんだけど」

 「へ? いや記憶にあるよ。確かあったと思ったんだけどなー。

 あ、あれはセブンイレブンだったっけかな?」

 

 と、ライバル店の名前をボロッと出して、かなりあやふやな返事。

 

 これ以上問答してても埒が明かないなーと思ってファミマを後にし、こんどはセブンイレブンへ。

 

 こちらはお母さん食堂の一歩先を行くご存じ「セブンプレミアム」でファンが倍増状況。

 で、そのセブンプレミアムの並びをざーっと見ていくと・・・あったあった、ありました。

 ファミマ店員のおねーさんが見た憶えていたのは、やっぱりこちら。セブンプレミアム北海道の男爵肉じゃがです。

 

 そうか、セブンイレブンはやっているのにファミマはやっていないんだ。「お母さん食堂」と銘打っているのになんでなんでなんで?

 

 疑問を拭い切れず、ついに思い余ってファミマのお客様相談室に電話をかけてしまった。3回呼び出した後に女性の声。

 

 「はい、お電話ありがとうございます。ファミリーマートお客様相談室の○○でございます」

 「もしもし、福嶋と申しますが、お母さん食堂のメニューについて伺いたいことがあってお電話したんですが」

 「はい、ありがとうございます。どんなご用件でしょうか?」

 

 ・・・てな具合でなんでメニューにおふくろの味の代表選手である肉じゃががないのかと聞くと、サイトには載ってませんねーとピンぼけたお返事。

 

 「サイトでもお店でも見当たらないから電話して聞いてるんです。いったいあのラインナップはどういう基準で決められているのか知りたいんですが」

 「わかりました~。では商品企画室に問い合わせてみます。お客様のお名前とご連絡先を教えていただけますか」

 

 てな具合で電話番号を教えていったん切って他のことをやってると8分後に電話が鳴った。

 

 「問い合わせたところ、肉じゃがは出してないし今後も出す予定はないそうです」

 

 思わずセブンイレブンにはあるぞと言いたくなったが、そこはぐっとこらえて

 「そうですか。お忙しいところお手間をかけてすみませんでした」

 「いえいえ、また何かござまいましたらお気軽にお問い合わせください」

 

 てなわけでラインナップはどういう基準で決められているのかという話は忘れ去られていた。

 これはお客様相談室ではダメだ。

 何とか本社の商品企画室にダイレクトに取材を申し込まねばと思ったが、「日本のおふくろの味の変遷」だとか「和食大研究」とか「コンビニ惣菜の栄枯盛衰」とか、本でもサイトでもいいので何かそういう企画をやっているという大義名分がなくては乗り込めない。

 

 今のところ、仕事で頼まれてもいないし、自主企画でさすがにそこまでやる時間も情熱も持ち合わせてないので、今回はここで打ち切りにした。

 

 しかし、僕はある大きな変化に気付いた。

 やはり「おふくろの味=肉じゃが」という概念は間違いなく大きく揺らいでいる。

 なんといっても.ボルシチやエビチリがお母さん食堂にラインアップされる時代だ。

 そういえば僕だっておふくろに作ってもらったのはハンバーグだとかカレーだとかトンカツだもんな。

 若い連中にとっては肉じゃがなんて限りなく存在感の薄い小鉢料理の認識しかないのかもしれない。

 もはや肉じゃがは「古き良き日本の郷愁を誘うファンタジー料理」としてすら生き残るのが難しい時代に入っているのかも知れない。

 

 平成の終焉に向けて日本の文化は地殻変動を起こしている。

 そう感じられたのが、今回の収穫と言えば収穫かなぁ。

 

 これについてはまたの機会に考察を重ねたいと思っている。