どんな人でもお葬式になると「いい人でした」「立派な人でした」で、きれいにまとめられてしまうのだけど、さすが先日の左とん平さんのお別れ会は違っていた。
発起人代表の里見浩太朗さんは、お別れの言葉(弔辞)として、祭壇にデン!と据えられた190インチの大画面に映し出された遺影に向かって思い出を語りかけた。
とん平さんと里見さんはゴルフ友達で、一緒にゴルフに出かけるとき、里見さんはとん平さんの家に朝、迎えに行くことがちょくちょくあったという。
ところがある朝迎えに行くと、昨日麻雀をしに出掛けたきり帰って来てないという。
その足で麻雀屋へ行くと、とん平さんはまだ麻雀を打っていて「よぉ浩ちゃん、ちょっと待ってて」なんて言う。
「とんちゃん、ゴルフに行くのになんで朝の8時に麻雀屋にいるんだよ」
と語り掛けると、会場が思わず笑いでほころんだ。
喜劇役者だと、こんなエピソードも輝かしい勲章だ。
参列者にとっても、在りし日のとん平さんの人柄が、ひとしお心に沁みる。
これだけで終わらず、里見さんはこのエピソードに、しみじみと感慨を込めてこう付け加えた。
「でもそんなときに限って、とんちゃん、すごくスコアがいいんだよねぇ」
とん平さんのゴルフ好き・麻雀好きは有名だったようだ。
どっちも全力でやっていたのだろう。
好きなことをダブルでやっていると、ツボが刺激され、相乗効果が起こるらしい。
徹マンで寝不足だの何だのなんて関係ない。
集中力がアップし、運も手伝って自己ベストに近いパフォーマンスが生まれる。
仕事でもそうだ。
好きなことに没頭して気分が乗れば、常識的なマニュアルに則ったやり方よりも何倍も高いパフォーマンスができる。
人間はひとりひとり違うツボをもっている。
ロボットじゃないのだから、世にはびこる「こうすればうまくいく」式のマニュアルから出てくる能力はごくささやかなものだ。
個々の人間は神秘に溢れた面白い存在である。
それを無視して一般的な公式、他人の作ったマニュアルに囚われていると、本当の自分の力は発揮できない。
とん平さんと里見さんの最後の対話はそんなことを考えさせられた。
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