わたしを思い出の場所に連れてって――
そんな末期患者の願いをかなえるのが「ラストドライブ」。
この数年、ヨーロッパで静かに広がってきた、いわゆる終活支援です。
昨年夏、ドイツでの事例を取材したドキュメンタリー番組がNHK-BSで放送されました。たまたまそれを見て感想をブログに書いたら、その時だけアクセス数が5倍くらいに跳ね上がってびっくりしました。けっこう関心の高い人が多いようです。
じつは今年から日本でもこれと同様の終活支援サービスが始まりつつあります。
さいたま市の「タウ」という会社がCSR(社会貢献事業)として始めた「願いの車」がそれ。余命少なく、一人では外出困難な患者を希望の場所に無料送迎するというものです。
タウは事故車の買い取り・販売を手掛ける会社で、社長がかの番組に心を揺すられ、「自分たちも車を扱う仕事をしているので」と、立ち上げました。
当面は近隣の病院やホスピスに声をかけて説明し、希望者を募るというやり方で進めていくそうです。
あらかじめ民間救急会社と提携しており、車両は酸素ボンベ、吸引機、自動体外式
除細動機(AED)などを装備した民間救急車を使用。外出には看護師やボランティアが同行。ただし外出は日帰りのみ。
主治医の了承と、家族の同意を得た上で送迎です。
僕は「月刊仏事」の記事を書くために電話で広報の方と話したのですが、この事業に誇りを持ち、かといって気負うこともなく、たいへん美しい応対だったことにも心惹かれました。
今後、提携先を県内の病院などに広げ、将来的には、活動に理解を示す企業からの協賛も。2019年には公益社団法人にして全国的活動を目指すそうです。
これも高齢化社会・多死化社会における一つの文化になり得るでしょう。 これからの展開が楽しみです。
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