人間の中には「慣習的自己」と「本質的自己」という二つの自己が宿っている。
と看破したのは精神科医の神谷美恵子さんという人。
人間は社会生活が長くなるにつれ、つまり、おとなになるにつれ、慣習的自己が肥え太り、本質的自己がやせ細っていく。
現実の社会生活に対応するのが慣習的自己。
何につけても、これをするのは得か損かと考える。
そして他者が自分をどう認識するのかに気を張り詰める。
本質的自己は子供の頃は元気いっぱい。
けれども齢とともにだんだん隅に追いやられ、息を潜めて暮らすようになる。
けっして死んではいないけれど、ネグレストされた子供のように引きこもる。
「自分を見失う」とは慣習的自己に支配され、本質的自己を見失うこと。
いっそのこと、慣習的自己オンリーで生きればいい、と思うが、どこか心のすき間に
「本当は自分は何がしたいのか、何ができるのか?」
そう本質的自己が囁くのが聴こえてしまう。
またネグレストするか?
それとも耳を傾けるか?
それとも、とりあえずネットに何か書き込んでみるか?
「これが本当の自分です」というようなものを。
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