とんかつ屋はいかにして声優に転身したか

 

 9月も終わり。

 そういえば今年はお祭りの記事を書きませんでしたが、ちゃんとお神輿を担いできました。

 そこで親児の会の仲間に会ったのですが、そのうちの一人はご子息が声優を志していると聞きました。

 

 アニメ、ゲーム、映画の吹き替えのみならず、今の時代、特に日本ではいろいろなところで声優のニーズがあります。

 

 そして顔出しする俳優に比べると割合長持ちする、劣化が遅い、ということで、結構な職業とも言えます。

 が、志す人もそれに比例して増えていると思われるので、競争が大変です。

 

  以前は声優と言えば、お芝居をやって俳優を志していた人が、ひょんなことからこういう仕事もある、こっちのほうが安定して仕事がある、お金になる・・・といったことで、あえて言っちゃうと「俳優くずれ」がなることが多かった。

 

 小劇場をやっていた時代、僕が書いた芝居にチョイ役で出演していた俳優が、たまたまその舞台を見に来ていたプロデューサーの目にとまり、当時始まった某新アニメ番組の主役に抜擢。その作品が大ヒットを飛ばし、その某俳優さんも声優界の大スターに・・・というシンデレラストーリーもあります。

 あれは本当にびっくりしたなぁ。

 

 その頃から声優の仕事が増え、社会的認知度も上がり、中にはそこらの俳優をしのぐ人気を獲得する人も出てくると、いきなり声優を志す人も激増しました。

 

 それにしても、どうやって声優になるのか?

 どんな人が声優になれるのか?

 学校はいっぱいあってイロハは学べるけど、行けばなれるというものでもない。

 前述の某大物声優さんも、その芝居を見る限り、けっして特出して「うまい!」という人ではありませんでした。

 

 そこで思い出したのが、昨年やった仕事でチャンネル銀河の「歴人めし」のナレーションをやってくれた声優さん。

 この番組では歴史上の人物の食い物にまつわるエピソードを小噺風にまとめ、講談調の語りにしたのですが、とても達者にこなしてくれました。

 ヴォイスサンプルを聴くと、いわゆるアナウンサー系の真面目なナレーションから、ちょっとぶっとんだ演技まで幅広くこなせ、なかなか器用な人です。

 その彼が声優になったきっかけのエピソードが面白かった。

 

 収録の際、お昼のお弁当がトンカツだったのですが、彼はなんと実家がとんかつ屋さんで、自身も学校を卒業後、その家業を手伝っていたそうです。

 それがある日、お店で新聞を開くと、ルパン三世の声をやっていた山田康夫さんの訃報が。

 その瞬間、彼が何を思ったか。

 「よし、これで俺のポジションができた」

 

 彼自身はルパン三世の声をやる感じではないのですが、とにかくそう天啓を受けたかの如く感じたそうです。

 

 ちょっと出来過ぎた話なので、人を面白がらせるための作り話?

 とも思いますが、彼がその後、とんかつ屋から声優に転身し、活躍しているのは事実。

 意志の強さとというのとはちょっと違うけど、要はそれだけ自分の才能と運を信じられるか、ということです。

 

 いろいろ聞くと、他の職業から転身したという人は少なくない。

 「とんかつ屋から声優になりました」とか、「美容師から声優に」とか言った方が記憶に残るし、「今回の作品はブタが出てくるし、じゃあ元とんかつ屋を使ってみるか」という話にもなるんじゃないですかね。

 そんなアホな・・・と思われるかも知れないけど、裏事情はそんなところです。

 ぜんぜん「どうすれば声優になれるか?」の答になってなくて申し訳ないけど。