●大好物のフィッシュ&チップス
イギリスの「フィッシュ&チップス」が大好きで、昔、かの地で暮らしていた時はよく食べました。
いわゆるファーストフードで、要は魚の天ぷらとフライドポテトなのですが、これに盛大に塩とビネガーを振ってかぶりつく。
日本でもたまに見かけるので食べたことがありますが、全然ダメ。
なんというかお上品すぎる。カッコよく英国風に・・・をコンセプトにするせいかもしれませんが、スカしたラーメン屋がうまくないのと同じで、労働者階級の食物は、あんまり洗練されたアレンジメントでは味が出ません。
世界一の食大国・日本のセンス・技術が裏目に出てしまうのです。
フィッシュ&チップスの材料は主に白身魚で、タラを中心に、ヒラメやスズキなどが多かったように思いますが、なんでも最近、英国近海ではこれらの魚――特にタラが不漁で、安く提供できなくなっているとのこと。
そこで代わりにメインになりつつあるのが、イカ!
●愛するイカ
昔、読んだ本の中に「ヨーロッパ人はイカやタコを『悪魔の魚』として怖れ、嫌うので、食べることはない」と書かれていました。
その頃(30年ほど前?)はまだあんまりイタリアンも広まっておらず、僕は、ふーん、そうなんだ、あんなうまいものを食わないのかと思っていました。
ちなみに僕はイカ・タコが大好物で、名古屋人なので、よく「えびふりゃー好きでしょ」と言われるのですが、えびふりゃーより、イカふりゃーやカキふりゃーの方が断然好きです。
イカは刺身も寿司も天ぷらも、イカスミスパゲティも大好きです。
●イカ・タコを食べるヨーロッパと食べないヨーロッパ
ところが、さにあらず、イタリアをはじめ、スペイン、ポルトガル、ギリシャなどの南欧諸国ではかなり日常的にイカ・タコを食べていることが判明。
これらの国々を旅していた時は、毎日のようにイカ・タコを食べて命をつないでいました。
なので、その本の中で書かれていたヨーロッパ人とは、イギリスとかオランダとか北欧とか、北ヨーロッパ系の人のことらしい。
確かにイギリス人とイカ・タコはミスマッチという気がするし、ドイツ人やフランス人もあんまりイカ・タコを食べているイメージがない。
イカを食べるヒトラーとか、
タコを食べるマリーアントワネットとか・・・
想像すると面白いけど。
●地球環境の変化と市場の変化
つまり昔は、北の方の海ではイカ・タコがあまり生息しておらず、漁獲量もわずかだったので市場に出回らなかった。
見慣れない物は食えるかどうか、うまいかどうかわからない。
皮をむいたウサギや、にっこり笑ったブタの頭が、肉屋の店先にぶら下がっているのは「おいしそー」と思うけど、イカやタコが魚屋にあのままの姿形で並んだりすると、なんだか見た目気持ちわるーい・・・と、かの国の人たちは感じるわけです。
けれども地球の海が暖かくなり、それまで北にいた魚がさらに北へ、そして南にいた魚が北に上ってくる。
すると、英国近海でタラの代わりにイカが大量に採れるようになり、せっかくいっぱい採れるから売ってみるか、ということで市場に出回るようになり、じゃあこれを材料にするか・・・ということでお店で使ってみたら、お客にも好評。安いし、結構デリシャスじゃん、ということで、イカのフィッシュ&チップス(正確にはスクイド&チップス?)がポピュラーになりつつある・・・ということらしい。
●日本食やイタリア料理でイカ好き増加?
というわけで、昔ながらの食習慣も環境の変化があれば、割と簡単に変ってしまう。
フィッシュ&チップスが変わったのも、昔と比べて、日本食やイタリア料理・南欧料理が社会に浸透し、グルメ情報が大量に流通するようになって、イギリスの人たちの間でイカ・タコに抵抗感がなくなったからではないでしょうか。
これもまたグローバル化現象?
いずれにしても皆さん、脂肪たっぷりのお肉の食事は少々控えて、タウリンたっぷりのイカ・タコ食べて、健康になってくださーい!
というわけでイカ大歓迎。やっぱり本場で食べたいフィッシュ&チップス。
来年あたり、久しぶりに行こうかな。
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