お盆にちなんで先祖の話。
じいちゃん・ばあちゃんの話です。
最終回は父方の祖父の巻。
●幻のようなじいちゃん像
ちょうど僕が小学校に入学するときに亡くなったおじいちゃんは、ずいぶん僕を可愛がってくれた、と父や母から聞きましたが、あまり憶えていません。
近所の公園に散歩に連れて行ってもらったこととか、縁側でひなたぼっこをしながらザクロやイチジクの樹を見ていたことなど、かすかな記憶はあるものの、それが現実のことだったのか夢のことだったのか、よくわからない程度です。
そんな幻のような像しか残っていないのだけど、4人の祖父母の中で一番興味を覚えるのがこの人なのです。
●日本放浪の旅人
彼の名前は寅平といって、明治24年(1890年)の寅年生まれ。
名古屋にやってきたのは昭和になってから――40歳を過ぎた頃のようです。
というのはその頃、祖母と結婚し、父をはじめ子供を8人もうけているからです。
名古屋に来てからは会社勤めをしていたらしいのですが、それ以前はいったいどこで何の仕事をしながら、どう暮らしていたのかさっぱりわからない。
生前の父や叔父の話でよく出たのは、日本のあちこちを放浪してらしいこと。
けっこう女たらしで、どこかに異母兄弟がいるかもしれないということ。
異母兄弟の話はちょっと眉唾ものですが、仕事を求めてなのか、そういう性癖があったのかは、それこそ「フーテンの寅さん」のようにあちこちの土地を渡り歩いていたというのは本当らしい。
僕も高校卒で家を出て、海外暮らしをしていたりしたので「おまえは隔世遺伝でじいちゃんに似たのだ」とよく言われました。
●いずれ寅平像を創り上げる
これは僕の勝手な想像だけど、どこか丁稚奉公に出て、そこをクビになったか、逃げだしたかした後、露店とか見世物小屋みたいなところで糊口をしのいでいるうちに放浪生活が始まったのではないかと思います。
どうせ事実がわからないのなら、いっそ明治・大正時代を舞台に、このじいちゃんを主人公にした物語を書いてみようかと思っています。
そうすることで、自分にとっての祖父像を作り上げるのもアリではないかな、と思うのです。
寅平じいちゃん、まだじいちゃんが亡くなった齢まではかなりあるのでがんばります。
いずれまた会いましょう。
●家族メモリー
というわけで、じいさん・ばあさんのことを回顧してきたけど、その子供たちもこの10年ほどの間にち次々と亡くなってしまって、父方の8人きょうだいのうち、存命しているのは叔父さんひとり、母方の8人きょうだいは、母を含め3人存命。
僕が育てられ、幼い頃に暮らしていた世界は、もうほとんど跡形もなく消え去ろうとしています。
世の中もあの昭和の時代とはまったく違った世界に変りつつあります。
だから自分の記憶の中にしか残っている人たちを大事にしていきたいと思っています。
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