暑いので近所のプールへ行こうと外へ出たら、道ばたでカラスが何かくわえてズリズリと引きずっています。
どこかからゴミを拾ってきたのかと思ったら、その引っ張られているやつはバタバタともがている。
近寄ってよく見ると、ガマガエルでした。あちゃー!
もうあきまへん、炎天下、あわれカラスの餌食にされるのか、グロいシーンに出くわしたかと思いきや、どうもカラスの方は食ってやろうという気はなく、逃げようとするガマの足を引っ張って引きずり回して離して、引っ張って離して・・・を繰り返し、なにやら弄んでいる様子。
カラス:カカカカ、ほれほれほれ。
ガマ:わあっ、やめてください。たすけてください。
カラス:カカッカカ、助かりたいか、ほれほれ。
ガマ:なんてことするんです。やるなら一気にバッサリやって、ちゃんと煮るなり食うなりしてください。
カラス:バーカ、おまえみたいなまずいカエルなんか食べられるか。
おいらは毎日、人間の食い残しをたっぷり食ってお腹いっぱいなんだもーん。
ガマ:じゃあ何でこんなことするんです?
カラス:いじめてやっているんだよ。カカカカ、おいら弱い者いじめ、だーいすき! おまえの仲間もいっぱいいじめ殺してやったぜよ。
その時、ガマの心の中で何かがゲコッ!と弾けた。
よみガエル、よみガエル、
その体に代々受け継がれてきた千年ガマのパワーがよみガエル。
それまで敵に背中を向けて、ひたすら逃げようとしていたガマ、くるりと前を向いた。
およよよ・・・
ちょっといきなり向かい合って、ちょっとびっくりした様子のカラス。
ガマ:このファック野郎!おとなしくしてりゃつけ上がりやがって、おい、こら。
いきなり啖呵を切ったガマにビビッてあとずさるカラス。
カラス:おお、なんだなんだ、おまえ本気か?やるっていうのか?
ガマ:あたりめーだろ、焼き鳥野郎。俺を誰だと思っているんだ。この永福界隈のカエル仲間じゃちっとは知られた、千年ガマの末裔、その名もガマン。けどなぁ、もうブチ切れた。我慢するのもここまでだぜ。
ガマ、じりじり一歩二歩、カラスに向かってゆく。
カラス、ビビっていったん空へ逃げる。
ガマ:おう、逃げるのか。おれと勝負できねーってか。
空を見上げ、吠えるガマ。
これは写真を撮っておこうと、ここで僕はきびすを返し、家に戻ってカメラ(携帯)を取ってきた。この間、約1分。
ところが現場に戻ってみると、通りすがりのおばあさんが持っていた杖でガマをちょいちょいと突いている。
どうやら再びカラスが地上に降りてひと悶着あったようで、おばあさんが「早くお逃げ」とガマを助けている様子。
しかし、ガマは納得できない。
「おい、ばあさん、邪魔すんな。助けてもらわなくても俺はあんなヘタレガラスになんか負けねえ。
あんなやつ、俺のほうが焼き鳥にして食ってやらぁ!」
そんな啖呵もむなしく、おばあさんの仲介によって、結局、勝負は痛み分け。カラスはどっかに行っちゃった。
でも、前後の様子を知る僕には、臆することなく果敢にカラスに立ち向かい、見事に撃退したガマの大いなる勝利に見えたのです。
おばあさんが去り、写真に撮る僕の前で、えっちらおっちらと道端の排水溝に辿り着いたガマは、そのまま小さな排水溝の穴から地下へとダイブした。
ドボン!
ガマガエル 負けるな 飛び込む 水の音
パクリで一句決めて、僕はプールへ行ってゲコゲコとカエル泳ぎをしてきました。
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