昨日、たまたまテレビ(NHK-BS)で「ラストドライブ」というドキュメンタリー番組を見ました。
ドイツのあるボランティア組織の話で、死にゆく人のために、最期に訪れたいところに車に乗せて連れて行く。そしてスタッフが一緒に一日を過ごし、彼もしくは彼女の最期の願いをかなえるというもの。
●最後の願いをかなえる小旅行
ある高齢の女性は、何年も前にこの世から先立った夫と一緒に行ったというオランダの海岸へ。
夫婦間のとても美しい思い出がそこに満ちているのかと思いきや、到着して彼女の口から出てきたのは、長い間、自分を家に閉じ込め、浮気をしていたという夫に対する、呪いにも似た不平不満でした。
けっして幸せな結婚生活を送ったわけでなく、子供をもうけることもなかった。
なのに、それでも死ぬまで添い遂げた。
一体なぜなのだろう?
自分が犠牲にしてきた感情は、ただ安心して人生を過ごすための取引だったのか?
でもそれだけじゃない・・・。
そうした問答の繰り返しの果てに、オランダの海を見れば、最期にその答えが見つかるかもしれない――
彼女はそう考えたのかもしれません。
もう一人、まだ中年の男性は、現在の恋人と一緒に過ごした湖へ――と願い出ました。
その彼女とはいずれ結婚を考えていたが、1年前に病気が見つかり、断念したとのことでした。
まだ人生半ばだと思っていたのに、すべてが手遅れになってしまった・・・。
そんな悔恨の思いがあったのかも知れません。
こちらのカップルの場合は、スタッフはできるだけ二人だけでそっとしておこうとしていました。いつまでも一緒に湖を見ている二人の後姿が印象的でした。
いずれも、このラストドライブが終わって1ヵ月経たないうちにこの世を去りました。
感動を押し付けたり、人間の良心を謳い上げるような演出をするわけでなく、ゴロンとありのままを転がしたような作品で、とても素直に見られました。
●スタッフにとってのラストドライブ
組織のスタッフの一人――60代の男性は、なぜこの仕事をしているのか、との質問に、家庭で暴力(おそらく父親から)振るわれたという話をしました。
定年退職後、そうした幼少期の体験から人の幸せに貢献することをしたいと強く思うようになったから・・・と語っていました。
また、別のスタッフ――母親の、自分の子供たちにこの仕事について説明している姿も印象的でした。
ちょっと聞き逃してしまったのですが、このラストドライブ――人生最後の小旅行を実践するスタッフは登録制で、たまたま日にちが合った人が出向くそうです。
中には休職中の看護師や介護士の人もいるようですが、特別な資格が必要なわけでなく、説明会とちょっとした研修を受ければ、誰でもできるようです。
●新しい社会の潮流
こうした福祉(そして医療の一種でもある)サービスが、社会でどの程度浸透しているのかはよくわかりません。
しかし番組内で出てきたオランダの海岸やドイツ国内の湖畔のレストランでは、ごく自然にこうした人たちを受け入れている様子が見て取れました。
さすが成熟社会のヨーロッパ、さすがドイツと思わざるを得ません。
現在の日本ではこうしたサービスが行われることはまだ考えにくいですが、そう遠くないうちにスタートし、定着してくるように思います。
それくらいニーズは高いと思うし、スタッフをやりたという人も少なくないでしょう。
これはほとんどの先進国がいずれ体験する、新しい社会の潮流なのだと思います。
人間は最期まで不可思議で不条理な存在。
死に瀕して、人が何を望み、何を語り、何を悟るのか。
それを死に行く人が、支え送る人が、互いに直視し、実感することは、人間の未来全体のスープの素になるのではないのかな。
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mine (金曜日, 19 1月 2018 10:04)
以前ホームに勤務。入居後、家では出来なかった事をかなえられればと話。ドライブに。ボランティアではできず、施設の許可まで必要だったので、内緒でドライブへ。今思えば事故でもあれば問題でした。(笑) いいと思います、是非ともボランティア活動始まれば協力したいと思います。また、来月からホーム勤務。
ウェルデザイン(福祉ハイヤー) (水曜日, 28 2月 2018 10:00)
私は今、介護タクシーの事業をしています。この番組を観てすごく同感致しました
私達は正にこの様な事を目指しています。