夏のテレビのニュースで、道行く人たちが「暑い」とコメントすることに関する考察

 

 この季節、テレビのニュースではギラギラの太陽が映し出されるとともに、「暑いですぅ~」という街の人たちの声が紹介されます。

 

 「いやぁ、全然暑くなんかないですよ」

 「私は平気です。涼しいです」

 「これくらいの暑さで弱音を吐いちゃおられんて。ガッハハハ・・・」

 

 といった声が少しはあってもよさそうなものですが、局の都合上、そうしたコメントは巧みにカットされています。

 

 「今日はすごーく暑かったんだよ~ん」ということを伝えるのが、このニュースのテーマであり、街の人たちの声は、いわばその演出手段の一つなのでやむをえません。

 

 しかし、冬の寒い日に「寒いですぅ~」という街の人たちのコメントは、あまり聞きません。ニュースの演出として使えないのです。

 

 なぜだろう?と、考えました。

 

 「暑いですぅ~」は視聴者の共感を得られる。

 もう少し砕けて言うと「ウケる」。

 

 SNSなどでも「今日は暑いね~」と言えば、「そうだね~」と返ってきて、それでなんとなく会話が成り立ったような、私とあの人はつながった!という気分になる。 

 

 そうだよね、暑いな~と思っていたのはわたしだけじゃない。

 みんな暑かったんだ。ああ、よかった!――と、心の底から思え、癒されるのです。

 

 もし、テレビやインターネットの中で、「いや、全然暑くなんかありませんよ」という声が聞こえてきたら、見ている人たちは「えっ!?」と不安な気持ちに陥り、パニックになってしまうかも知れません。

 テレビは公共の電波なので、そういうことはできません。

 ネットだったら、そういう悪戯を仕掛ける輩もいるかも知れませんが・・・。

 

 ところが、「寒いですぅ~」は、あんまりウケない。

 そうだよね、寒いな~と思っていたのはわたしだけじゃない。

 みんな寒かったんだ。ああ、よかった!――とは思ってもらえない。

 

 なぜだろう?と、また考えました。

 

 「暑い」のほうは、言葉に出して発散することによって身体の熱を放出できて、少しは気がまぎれる。

 けれども「寒い」のほうは、大声で「さむーい!」と叫んでみても、あんまりそういう効果はない。

 どっちかというと、じっと黙って耐えていたほうが熱を身体の中に閉じ込めて、少しはあったかくなる・・・ような気がする。

 

 実証実験として、ヤンチャボーズ・ヤンチャ娘に扮して、

 「この夏のボケカス!くそあっちーぞ、うらぁ!」とシャウトしてみましょう。

 瞬間的にでもスッキリ暑さがぶっ飛びます。 

 

 これに対して、

 「冬のクソターケ! さびーぞ、うらぁ!」と大声出してみても、なんかむなしく響く。

 それこそヒュルルル・・・と寒い風が吹いてきそうです。

 

 これで暑い時は言葉にして出したほうがよい、ということは分かりましたが、ただ「暑いですぅ~」というだけでは芸がないし、テンションも上がらない。 

 

 暑いのは事実なのでしかたないけど、その事実に心を合わせてベばっていてはダメです。

 いっしょにポジティブな言葉を唱え、元気になる工夫が必要です。

 

 「今日も暑いぜ、元気になるぜ」

 「暑いの大好き。わたし夏を愛してる💛」

 「あの太陽のように、おれもギラギラ輝いている」

 

 いかがでしょう?

 だまされたと思って唱えてみてください。

 

 そんなことやってられるか、アホ!

 という声も聞こえてきそうですが、そう思う人には、

 

 「今日も暑いぞ。ビールがうまい!」

 というのはどうでしょう?

 ビールがダメなら、アイスでも、スイカでも、かき氷でもいいですが。

 

 ま、いずれにしても今後しばらくの間、日本全国暑くなりそうなので、

 熱中症や夏バテに気を付けて、元気にお過ごしください。