●カッパ娘とカッパ少年
先日、その昔「デメキン」というあだ名の女の子がいたという話をしましたが、「カッパ」というあだ名も女の子もいました。
本当に小学生というのはひどいあだ名をつけるものです。
ただ、デメキンとちがって、彼女の場合容姿がカッパに似ているわけではありませんでした。
寿司屋の娘なのに魚が嫌いで、お寿司はカッパ巻きが好きだ・・・というところから「カッパ」とネーミング。
気さくでさっぱりしていて結構かわいいので、みんな親愛の情を込めて「カッパ」と呼んでしました。
そしてもう一つ、彼女がカッパだった理由は、カッパに似た男の子、つまり僕らの同級生の男子のことが好きだったからです。
この男子の方は正真正銘カッパ顔で、運動神経もよく、泳ぎも得意。勉強も割と優秀でした。
そんなカッパ少年と寿司屋の娘を、僕たちはひそかに「カッパの夫婦」と呼び、宿題でも何でもなかったけど、小学校5年生の夏休みにカッパの夫婦の物語を書きました。
友だちと二人で始めて、本当はそいつのほうが話を書いて、僕がイラストを担当する予定だったのですが、そいつがすぐに飽きて投げ出してしまったので、結局、僕が両方とも担当することになりました。
確かこんな話です。
●人間になりたいカッパの大冒険
カジカガエルのきれいな声が響く岐阜の山奥に、カッパの夫婦が住んでいた。
とても仲の良い夫婦で、夫は魚が大好物、妻はキュウリが大好物。
美しい自然の中で、ふたりはとても幸せに暮らしていた。
そんなある日、美しい人間の娘が山で迷子になっているのを夫が発見し、彼女に街へ帰る道を教えてあげた。
それ以来、夫はその娘のことが忘れられず、ついに人間の暮らす街へ行くと言い出した。
もちろん妻は大反対したが、夫は「おれはこんな山奥ですっとカッパをやっているような男じゃない」と言い、ついには「人間になるんだ」と言いだした。
妻はあの手この手で夫の決意を翻そうとしたが、夫はガンとして聞き入れない。
何とか人間になれないものかと、山のバケギツネのところに相談しに行くと、キツネは名古屋に行くまでの地図を取り出し、
「この道を行け。この道の途中には3種類の化け物がいて、行く手に立ちふさがる。その関門をみんな突破して名古屋に着いたら、おまえは人間になる」と予言した。
この3種類の化け物も、その頃の友だちをモデルに考案した妖怪とか怪獣とか怪人です。
で、これらの関門を潜り抜け、とうとうこの冒険を成功させて、川を下ってカッパは名古屋に着く。
しかし、美しい故郷の清流とちがって、名古屋の川はヘドロだらけで汚れきっていた。
(僕が小学生だった昭和40年代当時、公害が大きな社会問題になっていました。日本の都会の川はみんなそうだったと思いますが、工場などの排水で、うちの近所を流れていた川は本当にドロドロで真っ黒でした)
その汚い川を泳いでいたカッパの身体は化学変化を起こし、甲羅は溶け、頭のお皿も手足の水かきもなくなり、川から上がると、なんと彼は本当にカッパから人間に変態していた!・・・
●よみがえる?カッパ
この続きをさっぱり憶えていないのですが、おそらく冒険活劇の部分に重きを置いていて、その部分を書き終えてしまったので、飽きて適当に終わらせてしまったのでしょう。
でも、今こうして見ると、このあとの後半部分が、キモになるストーリーですね。
結局、この物語は誰にも見せなかったのだけど、今、こうして思い出してみると、なんだか日本昔話と「人魚姫」と各種冒険活劇とがミックスされていて、結構面白いなぁ。
設定やディテールをちゃんとして、いずれ再生してみたいと思います。
かの昔、カッパだったクリキくんとヤマダさんは今でも元気かなぁ。
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