●取材先を選ぶ
レギュラーワークの鎌倉新書「月刊仏事」の連載企画「全国葬儀供養最新事情」は、地方への取材がメインなので、もっぱらメールでやっています。
どんなネタを選んで構成するか、要するにその月の企画は一任されているので、まずインターネットでいろいろキーワードを打ち込んでヒットするサイト、および、そこから関連して出てくるサイト・ブログを片っ端から見ます。
それで読者のニーズに叶った、興味深い組織・企業・個人を取材先として選び、電話かメールで取材の趣旨を説明。同意が得られれば取材に取り掛かります。
●なぜ相手はメール取材を選ぶのか
取材方法はメールで質問項目を作り、それに対して電話かメールでご回答いただきたい、と提案します。
すると、10人中9人はメールでの回答を選びます。
電話取材のほうが所要時間は少ないのですが、20~30分かかるので、これも日時の拘束があるし、トークに自信のない人は、口頭で言いたいことをうまく伝えられるかどうか不安を覚えるからでしょう。
それなら自分で納得できるよう、じっくり回答を考えられるメールで・・・ということで選択するのだと思います。
●みんな取材慣れしてきた
これだけメディアが発達し多様化すると、皆さん、取材を受けるメリットがあると分かっていても、それに対しての光栄度というか、喜び・ありがたみなどはどうしても薄れます。
小さなマイナーメディアが相手では、忙しい中、ちょっとやそっとでは時間を割いてくれません。
これは遠隔地の取材だけでなく近場でも同様で、こちらが「ご都合のよう時間に合わせます」と言っても、特に小さな会社や個人の場合は、渋ることが多くなりました。
見知らぬ取材者と直接相対するのは緊張するし、抵抗感を覚えるのでしょう。
そうした時、メールはとても有効です。
面と向かうと、緊張してなかなかうまく人とやり取りできなくても、メールでなら優れたコミュニケーション能力を発揮できる人は大勢います。
また、ある程度文章表現が得意な人なら、メールの方が自分の考えをより正確に、より深く伝えられる――と考えるようです。
●メール取材の工夫
なので、メールでも充実した取材になるよう工夫しています。
たとえば仏事の「地域の葬儀社に訊く」のメール取材は、基本的にどこも訊くことは共通なので、同じフォーマットを使いますが、少しだけ、その会社・個人あてのピンポイントの情報や質問を入れます。
たとえば、なぜ御社・あなたを取材対象として選んだのか、きちんと理由を書く。
創業〇十年の老舗だからとか、逆に若いフレッシュな会社だからとか、女性の社長だからとか、プロフィールが興味深いとか、です。
ブログ記事の感想もできれば書き、そこから質問につなげていくこともできます。
そうしたことに手を抜かずにやると、読む相手もすんなり質問を受け入れられ、メール上でのコミュニケーションが円滑に進みます。
ただ円滑過ぎても面白くないので、必ず質問の中に引っかかるところ――相手が考え込まずにいられないところを作っておきます。
質問の並べ方・構成にもストーリーが必要です。
そうしたことを意識して作ると、直接面会する取材よりも良い回答を引き出せるケースも多いのです。
●記事の完成
ちなみに回答をもらっても、そのまま記事にするわけではありません。
その回答を膨らませ、自分の解釈・解説も付け加えたりしながら原稿を作り上げ、それを取材相手に送って確認してもらい、完成させます。
もちろん大きな規模の特集記事の場合、その場所の空気を伝える必要がある場合、写真撮影・動画撮影が伴う場合は、現場へ赴き、面会します。
現場取材、直接のインタビューによって得られる細かいニュアンスは、なかなかメールの文面だけでは出てきません。
しかし小規模なレベルの仕事だと、もはや「メールじゃ良い取材はできない」なんて言っていられません。
メールを使ってちゃんと相手の意見やアピールを引き出しつつ、読者がその取材対象者をよりよく理解できるように誂えるのがプロなのだと思います。
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