先日、「仏事」の仕事で和歌山の清掃会社を取材したときのこと。
その会社は仕事の半分以上が、遺品整理や生前整理、そして独居老人が亡くなった後の家の清掃などをやる、いわゆるデスケア関連の会社です。
和歌山というのは高齢化の先進県で、人口全体に対する高齢者の割合が全国第6位。
近畿地方ではナンバーワンとのことで、この数件、家の中を整理したいという高齢者が激増しているのだとか。
デスケア業界で言う「生前整理」のニーズに応じて、このビジネスに参入する業者も増えているとのこと。
そこでかなりの割合で出てくるのが、お人形さんです。
この季節、父・母から子へ、祖父・祖母からかわいい孫へ、立派な五月人形が贈られます。少し前なら、もちろん、女の子を寿ぐひな人形が。
これらの華やかな人形たちは、最初の数年は家の中ですごい存在感を放つのだけど、子供が大きくなるとともに、だんだんその存在感が薄れていきます。
そして気が付けば、子や孫は大人になり、人形たちは楽屋の隅に引きこもった役者のように。
ましてや子供が出て行ってしまった家では、こういっちゃなんだけど、ちょっと邪魔者になってしまう場合が多い。
そんなわけで、その会社では生前整理の仕事を受けていると、2~3ヵ月ほどの間に倉庫に人形があふれてしまうのだそうです。
スピリチュアルなんて信じないという人でも、やっぱり人形は「ただのモノ」としては扱えません。
みんな多かれ少なかれ、口には出さないまでも「これ魂入ってる???」と考えてしまう。
ポイとゴミ箱に捨てるわけにはいきません。
じつはこの会社の近所には「淡島神社」という、人形供養で全国的にも有名な神社があります。
長い間、家族の物語を育んできた人形たちはその役割を終えて、ふるさとの家をあとにし、しばしの下宿暮らしを終えたのち、生前整理屋さんの車でこの神社に辿り着きます。
そして厳かに供養され、安らかな眠りにつきます。
淡島神社に持って行ってもらえると聞くと、親御さんたちも安心して手放すことが出来るのだそうです。
ここだけでなく、こうした場所が全国津々浦々きちんとあるということは、人形にとって幸せなことなのでしょう。
子供にとっても、親にとっても、きっと。
最期にちゃんと行き着き、安らぐ場所があるから、安心して人形が作られ、売り買いされ、魂が入り、人形の文化が豊かになったのかなぁ、キャラクター文化につながっているのかなぁと思ったりしています。
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