放浪のブタ、ほじくり返すブタ

 

 ここのところ、頭の中を一匹のブタがピイピイ、ブーブー言いながら徘徊している。

 彼(彼女かも知れない)は、まだ子供のブタ。

 仕事場を求めてさすらう、中世のイングランドの石工の家族が、いざという時のための財産として連れ歩いていたブタか、

 あるいは戦国時代の薩摩軍が兵糧のために戦場で放牧していたブタか。

 

 まだ子供なので、毎日ごはんを食べさせてくれる人間が大好き。

 たらふく食べてどんどん大きくなると、みんながほめてくれてうれしくなる。それでまた食べる。

 

 でもある日、彼(彼女)は自分の運命に気づく。

 なぜ人間が自分を可愛がり、太るままにしてくれるのか。

 

 逃亡を画策するが、生まれながらの食いしん坊のブタは、自由の身になるには食えなくなるかも知れないというリスクを負うことも悟る。

 

 思春期のブタは思い悩みながら、自分の命運を握る人間たちを鋭い目で観察する。

 「食べられる者の目」で、人間がどんな暮らしをしながら何を、どうやって、どんな気持ちで食べるのか、見る。

 

 という具合で、次作は「食」をテーマにした作品。

 でも、このブタがどういう役回りになるのかはまだわかりません。

 とりあえずファーストストローク(初稿)は3ヵ月でやってみようと思っていますが、どれくらいの旅になるのやら。

 

 脳の奥にあることはブタに訊く。

 きっとブタがほじくり返してくれる。ここ掘れブヒブヒ。