トランプで民主主義の大バクチ

 

 

 もしやツーペアかスリーカードくらい持っているのか?

 まさかストレート? しかもフラッシュ? さらにロイヤルで?

 でもやっぱりブタかな・・・。

 

 父親の遺産があったとは言え、あれだけビジネスで成功した人だからそれなりに頭はいいんだろうと思っていたけど、連日のトランプ発言を聞いていると、すぐばれるウソをついたり、無知だったり、事実誤認をしていたり、単に放言しているのか、それとも裏に何か策略があるのか、今の時点ではよくわかりません。

 

 でも事実としてあるのは、彼はビジネスマンなので本音を喋る。

 それが痛快だ、気持ちいいと感じる人が半分いる。

 だから当選した、ということ。

 

 オバマ前大統領の時は、SNSで支持者が「Yes、We can」を合言葉に繋がったのが勝利に繋がったと、ネットの民主主義への貢献度がクローズアップされた、と記憶しています。

 

 今回の場合はSNS、特にツイッターなどで本音をぶちまける快感を覚えた人たちが、政治を動かせる立場で、自分が言いたかった本音を言ってくれるトランプ大統領に共感し、支持したということでしょう。

 いわばネット社会の別の側面が現れたということでしょうか。

 

 おめーら、世界の人たちみんなを幸せにするためにがんばりまぁ~す、皆さんも協力お願いしま~す、なんてぬかしてるけど、おれたちカネも仕事もねえのにどうやってそんなことできるんだ。やりたきゃまずオレたちを儲けさせろ。

 

 ・・・というのが約半分のアメリカ国民の声なんでしょうね。

 確かに生活するのに大きな不安を抱えていては、どんなきれいごとも耳に入ってきません。

 

 でも、現代の民主主義社会は、みんなが本音をがまんして、きれいな看板=建前を大事にすることで作られてきたのではないかな。

 建前とは夢であり、理想であり、永遠に実現しないであろうファンタジー、だとしても、です。

 

 そして、本音を代弁してくれる毒舌の芸能人・痛快なエンターテイナーがいて、笑わせてくれたり、しみじみさせてくれたり、感動させてくれたりする。

 そうした道化師たちの存在がクローズアップされ、人気を集めて全体のバランスが保たれる。

 それでなんとかやっと成り立ってきたのが、現代の民主主義社会だと思うのです。

 

 でもアメリカや、その前のイギリスのEU離脱の現状などを見ていると、もうそんな二重構造は成り立たない、続行不可能なところにきているのかな、とも感じます。

 

 ひとりひとりがネットで本音をぶちまけられる快感はドラッグのようなもので、一度覚えたら病みつきになってしまう。

 誰もそれをがまんできなくなってしまう。

 そうなれば建前を大事にすることなど、ばからしくてやっていられない。どうせウソばっかだし。

 

 そうして本音と建前の間の仕切りが崩れ、メルトダウンしたら、アメリカ社会のみならず世界中が大混乱に陥るでしょう。

 でも、もしかしら人間社会が次の段階――経済や産業にとらわれない、新しい、より高度な民主主義社会へ移行するには、そういう経験が必要なのかもしれない。

 

 そう考えるとトランプ大統領の出現は、人類の歴史上の壮大な実験になるのだろうか、という気がしてきます。

 というより大バクチ?