彼女の名前はタマというらしいけど、ねこネタでもアザラシネタでも、ましてや下ネタでもありません。
人生、なんでもたまたま当たったもので変わってしうなぁーというお話。
●赤い服の少女
子供の頃、楳図かずおの短編で「赤い服の少女」という作品を読みました。
なにせ怖いマンガを描かせたら右に出る者なし。そこに本が転がっているだけで、中からにょろにょろっとヘビ女が出てくるんじゃないかと想像して、震え上がってしまう楳図先生の作品です。
ドキドキしながら読んでいくと・・・
主人公の少女は女優だかダンサーだかの志望で、ライバルと競い合っていました。
実力もルックスもほぼ互角のこの二人が、映画だかミュージカルだかの主役のオーディションを受けることに。
その運命の日が迫ってきたある日、主人公は街のブティックのショーウィンドウに飾ってある赤い服を目撃し、直観がピーン!
「あの服よ。あの赤い服を着ていけば、私はオーディションに勝てる!」
しかし、彼女の家はそう裕福ではなかったので、お母さんに頼んでもすぐに買えない。どうやってかき集めたんだか、なんとかお金を作ってそのブティックに駆け込むと、タッチの差でその服は売れてしまっていた。しょぼーん。
そして後日、オーディション会場に行くと、なんと!ライバルがあの赤い服を着ているではありませんか。SHOCK!
で、監督だか演出家だかの心に刺さり、ライバルはみごと合格。主人公は落選し、みるも無残に落ち込んでしまった。
ところがまた後日、驚愕の知らせが。
その仕事で海外へ旅立ったライバルは、なんと飛行機事故で落命してしまう・・・という結末。主人公の少女は「もし私があの服を先に買っていたら・・・」と思いをめっぐらせて終わるのです。
細かいところがあやふやですが、だいたいこんなお話です。
なんやこれ? ヘビ女も猫目小僧もミイラ先生も出てこんがな、つまらんな・・・と思ったことが妙に記憶に残っていました。
実は怖い思いをせずに済んでホッとしていたのですがね。
子供の僕には分からなかった。おとなになってやっとその奥深さが味わえるようになった作品なのでした。
●人生も世界もタマタマでできている
じつは最近これとよく似た話を最近聞きました。
その人の人生もその日、たまたま着ていた服の色で人生が変わってしまいました。
この漫画に引っ掛けていえば、もし、その人が31年前のその日、赤い服を着ていたら、今の仕事に就いていなかったかも知れない。したがって僕とも会っていなかったかも知れない。
そう考えていくと、現在のあなたも僕も、星の数ほどの「タマタマ」の積み重ねで今、こうして出会い、お話を読んでもらっているわけです。面白いね。
「運も実力のうち」というけれど、迷い込んできたネコを手なづけるみたいに、タマタマ出会ったものをいかに活かし、うまく自分の中に取り込むか(あるいは嫌なタマなら、いかにうまく断ち切るか)が人生の操作術であり、醍醐味と言えます。
あと20日あるので今年もまだ、よいタマに出会えますように。にゃ~。
2016・12・9 FRI
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