「ねほりん ぱほりん」と人形劇の文化

 

●なんとレギュラー化!

 

 NHK-Eテレの「ねほりん ぱほりん」という番組が面白い。

 以前、単発で何度か見たことがあるのだけど、この秋からレギュラー化されたようです。山里亮太とYOUが声を演じるモグラのキャラクターが、ブタキャラクターの顔出しNGゲストに根ほり・葉ほりのインタビューをして本音を聞き出して行くという趣向。

 

 ゲストは芸能人とか有名人とかではなく、一般のワケありの人たち。国会議員の裏方とか、薬物中毒患者とか。

 

 昨日出てきたブタさんは「偽装キラキラ女子」なる人で、リアル世界では関西の片田舎のサエないOLなのに、ネット上では東京港区界隈のリッチでセレブなOLを偽装しているという20代だか30代だかの女性です。

 

●キラキラ女子の真実を追究

 

 ホテルのラウンジでリッチなランチだかディナーだかデザートを食べたとか、電〇マンの彼氏がベンツでお迎えに来ただとかの話を、いかにも本当らしく写真入りでSNSで伝えていて、フォロワーがいっぱいついている。

 が、これらの記事がみんな大嘘で、写真はネット上にあるのをあちこちからパクってきて、バレないように加工してのっけているというのです。

 記事のコンセプトの立て方から、そうした加工技術、せっせと作業するマメさまで、その努力と工夫たるや、僕も見習わなければいけないと思うくらいすごい。それこそ涙ものです。

 

 一方でもちろん、そのエネルギーをどこか他のところに使えんのか、と思うわけだけど、彼女は半ばリアルサイドの人生は諦めているところがあって、今のところはネット上で注目されることで精神の安定を得ていると言います。

 

 う~む。そういう人たちがいっぱいいるんだろうな。まだ若いけど、いったいいつまでそれで持つのかな、と心配になって来てしまうのですが・・・。

 

●生き残った人形劇文化

 

 つまりこの番組、NHK-Eテレらしく、社会派番組なわけです。

 ニュースの特集コーナーでもこういう顔出しNGのインタビューはやってるけど、ぼかしをかけたりして、なんか陰険なムードになりがち。そこをキャラ=人形劇で可愛くやっちゃおうというのが、この番組の面白いところ。

 

 もともと演劇は情報伝達手段が乏しかった時代、現実に起きたニュースを人々に伝えるために発展したものです。

 そして人形劇は、生身の役者が演じると生々しくて却って伝わらない――人間の脳はあまりにも自分と距離が近すぎると拒否反応を起こしたり、そこにある本質を理解しようとしない――のを、人形というツールを使って、よりわかりやすく、より効果的に伝えようと編み出されたもの。

 だから見る側もそこで表現されていることを理解しやすいし、社会風刺に適しているわけです。子供だけが見るものじゃなんですね。

 

 こういう番組が作れるのは、やっぱり人形劇を長くやってきたE―テレ(教育テレビ)ならではだと思います。人形劇の類は制作コストの問題で、他のチャンネルではもうずいぶん前から作らなくなりました。

 

 公共放送の強みで、Eーテレは制作を続け、コツコツとこの文化を守ってきました。こういうものは一度やめると、二度と作れなくなる。人形操作をはじめ、できる人をゼロから育て上げるのは不可能に近い。要は伝統芸能の継承問題です。

 もう10年以上前、E-テレ関係の仕事をやったと時、担当者の人が「いつ切られてもおかしくない」と漏らしていましたが、それがこういう形で生かされるのは、とてもうれしい。

 番組も面白いけど、日本の人形劇そのものも応援したい。

 

 

 

2016・10・17 MON