龍馬が暗殺された夜、軍鶏鍋を食べようとしていたことは割と有名な話だけど、じつはそんな記録はどこにもありません。
では、どうして有名になったかというと、かの司馬遼太郎先生の功績です。僕も若かりし頃、夢中になって読みました。「龍馬が行く」。今、多くの日本人の中にある龍馬像はこの小説からできているんですね。歴史というのは半分は文学です。
京都・近江屋で暗殺された、という史実を変えるわけにはいかないので、この物語をどう終わらせようか悩んだ司馬先生、悩んだ挙句、この軍鶏鍋をでっち上げたというわけです。
(龍馬の故郷・土佐は闘鶏が盛んだったし、幕末の京都には鶏肉を食べさせる店が結構あったので、まったく根拠がないわけではありません)
しかし、悲劇的なラストの一歩手前にこの軍鶏鍋を食べようとしていた、という設定を持ってきたのは、さすが!というか、もうこれしかない、龍馬のキャラとばっちりマッチ!という感じで、このエピソードは日本人の幕末物語の1ページに印刷されたのです。
今回、この仕事であれこれリサーチして思いましたが、僕たちが知っている歴史というのはいろんなところで脚色されて伝わってきています。
それを「事実と違うのは許さない」と怒る人たちもいますが、僕は歴史・伝記というのは、まず物語になっていないと、文字通り、お話にならないと思います。
物語になっているからこそ、映画やドラマになって人々が興味を持てるし、またその郷土やゆかりの地などが観光名所になって潤うのです。いまや歴史はまたとない観光資源です。
それで多くの子孫たちがハッピーになれば、歴人たちもうれしいのではないでしょうか。
・・・とういわけで僕もこの番組では史実は踏まえながらも、戦場に弁当屋のデリバリ―がやってきたり、ネコを密偵にしたり、お城に宅配便がお届け物に上がったり、いろいろ遊ばせてもらいました。
ちょっとでも笑ってもらえればハッピー。
https://www.ch-ginga.jp/movie-detail/index.php?film_id=13338
2016年5月26日 THU
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