高校演劇をやっていた時、1年上の先輩が自分で戯曲を書いて上演したことがあります。
その主人公のセリフで
「風が吹いている。ゴゥゴゥ……僕は風と話すことができる。風だけが僕の友達だから……」
というのがありました。
最初はカッコいいセリフを書くもんだなぁと感心したが、あとからほとんどKing Crimson キング・クリムゾンの「Ⅰ Talk to the Wind(風に語りて)」の歌詞のパクリであることがわかりました。
でも、その頃はそれで糾弾されるどころか、
「あのクリムゾンの詩の世界を自分の戯曲に採り入れるなんてすごい!」
と、周囲はむしろ尊敬の眼差しを送りました。
1969年にスタートしたキング・クリムゾンは、メンバーの中に「作詞家」がいました。
楽器は演奏しない。歌も歌わない。
だからライブをやってもステージに立たない。
そんな人がバンドの正式なメンバーとしてクレジットされている。
曲自体もすごかったが、そうした事実からも、僕の中でキング・クリムゾンは特別な存在になりました。
その作詞家―ーPete Shinfield ピート・シンフィールドは、おそらくキング・クリムゾンのコンセプトメーカーという位置づけだったのでしょう。
当初のクリムゾンはバンドと言うよりも、一種の音楽プロジェクトのような集団だったのだと思います。
だからアルバム1枚ごとにメンバーチェンジを繰り返していました。
「風に語りて」はかの名盤「クリムゾンキングの宮殿」で2曲目に収められており、「21世紀の精神異常者」の荒々しい、狂気の世界から一転、イアン・マクドナルドが奏でるフルートの音色が印象的な、平和でやさしい世界を醸し出していました。
じつはこの曲、クリムゾンの前身のバンド時代の原曲があり、ヴォーカルをグレッグ・レイクではなく、Judy Dybleジュディ・ダイブルというフォーク系の女性歌手が歌っていたのです。
彼女は1960年代にわずかな作品を残して、70年代・80年代の英国音楽シーンで華々しい活躍することもなく消えていった・・・
と思っていたのですが、なんと、21世紀になってから復活していたことを最近知りました。
どういう事情があってのことかはわかりません。
おそらく結婚・出産・育児が終わって・・・ということなのでしょうが、30年以上の年月を経ての復活です。
ミュージシャンの中には若い時代の栄光にしがみついて沈んでいく人もいるが、こんな人もいるんですね。
人生何があるかわかりません。
とゆーわけでニューヴォーカル、ニューアレンジで歌う
21世紀版「風に語りて」。
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