教室で待っていた2年生のいたいけな子どもたちは一同、顔面蒼白で震え上がった。
なにせ朝っぱらから“地獄”の話である。こんな素敵な秋晴れの朝にいきなり怖ろしい地獄に叩き落されるとは……
しかし、これが僕の使命なので心を鬼にして語り始める。
「じごくのそうべえ」。こっちが心を鬼にして読めば詠むほど子どもたちは大笑い。
それもそのはず、これは桂米朝の高座で知られる上方落語の名作「地獄八景亡者戯」(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)を題材にしたスリル満点・ユーモア満載の落語絵本。第1回絵本にっぽん賞受賞した、ユーモラスなストーリーが子どもたちに大人気のロングセラーだ。
語り口は関西弁。「やっぱおもろい話とゼニの話は関西弁に限りまんな」というわけで、わがデタラメモノマネ関西弁も冴え渡り、たっぷり楽しんでもらえたようである。
それにしてもこの軽業師そうべえをはじめとする、地獄に落ちた4人の登場人物たちのタフなこと! 閻魔大王の恐るべき罰にも冷静沈着……というか、オトボケかまして軽々と乗り越えていく様は哲学的ですらある。
また、「協力し合おう!」とか頑張らなくても、4人がそれぞれの得意なことを活かして自然にチームワークしているところもカッコイイではないか。これこそまさしく「生きる力」である。
こうした本を読んで笑っている子どもたちの顔を見ていると「生きる力」というやつは人間にもともと備わっている力なのだ、と思えてくる。
最近の医療などでは「自然治癒力を引き出す」ということがよく言われるが、それと同じで、おとなは子どもひとりひとりがもともと持っている生きるチカラを引き出すように心を傾けるべきなのだろう(ま、それがムズカシイのですがね)。
そのためには真面目一辺倒ではダメで、そうべえさんたちみたいに地獄も笑って楽しんでしまえるユーモアが大切。「ほなら、ぼちぼち生き返りまひょか」というわけで、この話は最近生きてないな~、笑ってないな~というおとなにもぜひオススメしたい一冊。
子どもたちと天国で遊んだような楽しい朝の15分間だった。
2011・10・8 SAT
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